続『走れメロス』感想文に綴られた、少年の素直な心情
感想文はさらに心情が綴られていきます。
「わたしは自分の部屋に戻り、ベッドに横たわりました。枕元には『走れメロス』がありました。読書感想文を書くために何日か前に読んだ本でした。
この『走れメロス』を読んだとき、友情とはすばらしいものだろう、人を信じることは尊いものだろう、力強い気持ちになりました。
しかし、○○君のお父さんの話を聞いた後では、『この小説っていったい……』と、数日前に感動した自分が、むなしく思えてしまいました。○○君のお父さんはとてもいい人でした。商店街の野球チームでピッチャーをしていることもあり、カーブやシュートの投げ方を教えてくれました。
子どものころからプラモデルが趣味だったということで、接着剤でくっつけただけの僕のプラモデルに何回も何回も色を重ねて塗ってくれました。色を塗られたプラモデルはまるで本物のようになりました。それは今でもわたしの宝物です。
どうしてあんなに優しかった○○君のお父さんが、土地と家を取り上げられなければならないのでしょうか? 夕食後このやるせない気持ちを父に話しました。『でもね、これは現実なんだ。現実は現実として受け止めないといけないんだ』。そう答えました。(次章へ続く)」